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肩の動きをイラストで描くなら、関節について知っておこう。

この記事を読むのに必要な時間は約 17 分です。

肩の動きTop画像

TOP画:肩の動き、関節の位置

肩を描くのが難しいと感じるのは、
肩の構造が少々複雑なことと
それに伴う動きが複雑に見えるから。

肩を理解して描けるようになるためには、
まず肩の構造と関節の位置を知ること。

その上で肩の動きを見てみると
イメージが掴みやすくなります。

 

根本的な構造がわからないままに
外側の形だけ追っていても
なかなか身に付きづらいものです。

それは外側の見た目に惑わされるから。

 

肩には筋肉も多いので、
表面上の形だけを追って描いてしまうと

描き上がったイラストに
不自然さが出たりするものです。

肩の関節を知っておこう

肩の動きを描くのなら、
関節の位置を知っておくことは大事です。

だいたいの位置を知っておくだけでも、
なんだかおかしな絵にはなりにくいもの。

まずは肩の骨の全体から見てみましょう。

肩部

【図1-1:肩から腕にかけての骨の図】

肩から腕の骨の図

肩から腕にかけての骨の図

肩の骨は主に2つ。

  • 肩甲骨 (けんこうこつ):緑色の部分
  • 鎖骨 (さこつ):青色の部分

肩から繋がる腕の骨(橙色の部分)は、
肩甲骨から繋がっています。

また、肩の骨が胴体と直接繋がっているのは
ただの1箇所のみ。

胸の中心の骨である胸骨(ピンク色)と
左右の鎖骨(青色)からなる関節で、

これを
「胸鎖関節(きょうさかんせつ)」
といいます。

肩はこの「胸鎖関節」を接点として
動くのです。

(名前はべつに覚えなくてもいいですよ~)

鎖骨の両端の関節

【図1-2:肩の関節1~胸鎖関節と肩鎖関節】

肩の骨と関節1

胸鎖関節と肩鎖関節

肩を構成する骨である肩甲骨と鎖骨。
これらを繋ぐ関節を見てみましょう。

まずは先程も書きましたけど、おさらい。

  • 胸鎖関節(きょうさかんせつ)

胸骨と鎖骨の内側の端がつながる関節で、
肩部が胴に繋がる唯一の関節。

肩甲骨が動いたとしても、
この関節の位置は変わらない。

 

  • 肩鎖関節(けんさかんせつ)

鎖骨の外側の端と、
肩甲骨(の肩峰(けんぽう))がつながる関節。

肩甲骨が動くと、鎖骨の外側の端も動く。

 

関節の名前は、両方の骨の頭文字で
構成されているので覚えやすいです。

(覚えなくていいんだけどね)

肩甲骨の仮関節

【図1-3:肩の関節2~肩甲骨の仮関節と肩甲上腕関節】

肩の骨と関節2

肩甲骨の仮関節と肩甲上腕関節

  • 肩甲骨の仮関節

肩甲骨の内側(前面の肋骨側)は特殊で、
肋骨の上を滑るように動きます。

しかし通常の関節とは違うため、
「仮関節」とも呼ばれています。

 

  • 肩甲上腕関節

肩甲骨と上腕骨がつながる関節。

肩甲骨が動けば腕の位置は変わるし、
腕が動けば肩甲骨が動きます。

 

細かいことは覚えなくてもいいのですが、
だいたい骨がこんな形で、
この辺に関節があるんだな~

というイメージを持っているだけでも
いいと思います。

肩はどんな動きをするのかな

肩は2つの骨(肩甲骨と鎖骨)で形成されていて
この2つの骨の連携で動きます。

しかし具体的には何がどうなっているのか
よくわからないですよね。

そこで肩の動きをいろいろ
イラストに描いてみました。

…って、さらっと言ってみたけど、
いざ描いてみるとむずかしく…^^;
肩の動きの複雑さを思い知りました(笑)

しかし臆することはないですよ。

むずかしく考えすぎず、
大まかな動きを知るだけでも

今は肩甲骨と鎖骨はこんな感じかな~
というイメージがわかってくると思います。

全く知らないで描くよりも
なんとなくでも知って描く方が
より理解が進むのです。

まずは自然体の肩

【図2-1:肩の動き1~自然体】

肩の動き1~自然体の肩

自然体の肩の状態

腕を自然に下げている状態。
この状態が安静時で、何もしない状態。

肩の動きのポイントは3つ。

  • 鎖骨の内側の端(胸鎖関節)の位置は変わらない
  • 鎖骨の外側の端(肩鎖関節)の位置は肩甲骨の動きに従い動く
  • 肩甲骨は肋骨の上をスライドして動く

これをふまえて次へいきましょう。

腕を動かす

【図2-2:肩の動き2~腕を挙げる】

  • 腕を挙げる(肩甲骨の上方回旋)
肩の動き2~腕を挙げる

腕を挙げる肩の状態

鎖骨の外側の端(肩鎖関節)は
肩甲骨に持ち上げられる。
肩甲骨の下側(下角)は外側へと動く。

自分の鎖骨や肩甲骨下角を触って
確認してみよう。

 

【図2-3:肩の動き3~腕を後ろへ回す】

  • 腕を後ろへまわす(肩甲骨の下方回旋)
肩の動き3~腕を後ろへ回す

腕を後ろへ回す肩の状態

肩甲骨が前側へ倒れ、鎖骨は前へ。
肩甲骨の下側(下角)は内側へ動く。
角度によっては下角が浮く。

肩だけ動かす

【図2-4:肩の動き4~肩を上げる】

  • 肩を上げる(挙上)
肩の動き4~肩を上げる

肩を上げる肩の状態

胸鎖関節定位置のまま。
肩甲骨は引き上げられ、押される鎖骨の
外側の端(肩鎖関節)は押し上げられる。

 

【図2-5:肩の動き5~肩を下げる】

  • 肩を下げる(下制)
肩の動き5~肩を下げる

肩を下げる肩の状態

胸鎖関節の位置は定位置のまま、
鎖骨の外側の端と肩甲骨は
引き下げられる。

 

【図2-6:肩の動き6~肩を寄せる】

  • 肩を後ろの中心へ寄せる(胸を張る)(内転)
肩の動き6~肩を寄せる

肩を寄せる肩の状態

胸を張ると、
両側の肩甲骨は背の中心に寄る。

それに伴い、鎖骨の外側の端(肩鎖関節)の
位置は後ろへ動く。

 

【図2-7:肩の動き~7肩をすぼめる】

  • 肩をすぼめる(外転)
肩の動き7~肩をすぼめる

肩をすぼめる状態

猫背になると肩甲骨は外側へ動く。
真後ろから見ると鎖骨はほぼ平らに見えるが
横から見ると肩が前へ出る(肩をすぼめる)
形になる。

 

以上。…てことで一応描いてはみたものの
あくまでも「こんな感じ」ということで
見ておいてくださいな~^^;

肩は上下左右、内転・外転、回旋という
複雑な動きをします。

 

腕の角度や位置、姿勢の違いで
肩甲骨の動きは違うし、
腕を動かさなくても肩甲骨は動かせる…

あまり深く考えすぎると
描けなくなったりすることもあるので、
だいたいのイメージがわかればいいですよ。

肩の動きを捉えてイラストにする

肩甲骨や鎖骨の構造と
関節や動き方を知っていれば、
動きのある肩のイメージを捉えやすい。

外見から身体の中身がどうなっているのか
見えずとも、皮膚表面に肩甲骨や鎖骨の
浮き出る形状から、状態がだいたいわかる。

するとイラストに起こすときにも、
なるたけ違和感のないように
描けるようになるはずです。

外見だけでは描きにくい肩の動き

【図3-1:バンザーイの図】
バンザーイ。

バンザーイの図1

バンザーイの図~外見

外見だけ描くと、こんな感じ。

これをそのまま模写しても、
なぜこんな形になるのか
なぜこんなところに凹凸があるのか
ということがわかりにくい。

理解しないままに真似て描いてみても
どうも形が崩れてしまう…
ということがあり、

とても描きにくいのじゃないかと思います。

内側の構造がわかると描きやすくなる

【図3-2:バンザーイの骨の透視図】

バンザーイの図2

バンザーイの図~透視図

人を描くときには、
身体の中には骨があるよ!

ということを忘れないように。
(もちろん筋肉とかもありますけど割愛)

骨の形や関節の位置など、内側の構造を
あるていど知っているだけでも、
外側に見える形を理解しやすいのです。

 

大雑把にでも骨と関節の位置を把握しておき
こんな風になっているんだろうな~
とイメージする。

骨ありきでイラストを描くと、
極端におかしな絵にはなりにくいものです。

例外の肩甲骨?

例外の肩甲骨、とは何でしょう。
(これは私が勝手に付けた名称ですけど…)

それは、人はそれぞれ身長も違えば
体格も違う、ということ。

もっとわかりやすく言えば、
背の真っ直ぐな人もいれば
背が丸くなった人もいる。

つまり、一人の人物を見て
人体を描く練習をしたときに、

それが全て正しいものだと思わないこと
ということです。

 

人は職業や毎日の身体の使い方などで
骨や関節の形が徐々に変わっていきます。

特別な設定のあるキャラクターを描く時には
同じ状況の人物や写真を参考にするのが
いちばんいいのですが、

逆に特別な設定のない人物を描くときに、
特別な状態の人物や写真を参考にして
しまわないこと。

それはどういうことなのか説明します。

ダンサーの肩甲骨

見た目の美しさが目的なのか、
特殊な身体の使い方をすることがあります。

たとえば、ダンサーの肩甲骨。

その道に縁の無い私には
詳しいことは不明ですが、
ダンサーの肩甲骨の動きは特殊です。

通常の肩甲骨の動きとは違い、
「腕を挙げた状態で肩甲骨を下げる」
ということをあえてするようなのです。

バレリーナに関しての記事などを見ると、
肩甲骨の動かし方というのが
とても重要らしいのですね。

 

【図4-1:ダンサーの特殊な肩甲骨】
腕を挙げたときの鎖骨と肩甲骨の違い。

左側:ダンサーの意識的な背中
右側:通常の腕を挙上する動きの背中

ダンサーの特殊な肩甲骨

ダンサーの特殊な肩甲骨の図

左側の図は、バレリーナさんの背中を
模写したものですが…

右側の肩に比べて
左側の肩では肩の位置が低いのです。

この違いは、首を長く見せ、
背中を引き締めて見せるのです。

腕を挙げたときに肩甲骨を下げる
という動きは、
普段何気なく腕を挙げるときの
肩甲骨の動きとは全く異なります。

 

リアルを追求しないイラストならば
どれを参考にしても構わないのですが

リアルなイラストを描きたい場合には、
状況の違うイラストを描いてしまうことで
違和感が生まれてしまうこともあるのです。

 

まぁ、そんなことに気づく人も
なかなかいない気がしますけど…
逆に言えば、ダンス経験者ならば
気づくかもしれないですよね。

リアリティのあるイラストを描きたい
場合には、気にしておくのもひとつですよ。

 

ちなみに、日本舞踊などで女形を演じる
男性も、肩幅を狭く見せるために
肩甲骨を下げるのだとか。

職業柄などで体付きを操作したりするのは
面白いですね。

翼状肩甲骨

次は、先程のように意識的にではなく、
身体の故障からくる状態について。

例として「翼状(よくじょう)肩甲骨」
という肩の状態があります。

 

【図4-2:翼状肩甲骨】
腕を前方に挙げたときに肩甲骨が浮き出る。

翼状肩甲骨

翼状肩甲骨の図

スポーツのやりすぎなどで、
前鋸筋(ぜんきょきん)という筋肉が
うまく動作しない状態になると出る症状で
肩甲骨が浮き上がってしまっている状態。

明らかな症状の場合には気づくけど、
軽めの状態だったり
身近な人で見慣れていると
あまり違和感が持てない場合もあるかも。

けれども身体の故障が何もない人とは
違う状態なので、
そのままイラストを描くための
参考にするには不向きかなと思います。

 

「ダンサーの肩甲骨」の場合は
意識的に操作をしている状態。

「翼状肩甲骨」の場合は、
身体のバランスを欠いてうまく動作
しなくなっている状態。

「肩」という部分をひとつ取ってみても
人の身体の動きには、こういった違いも
あるので気に留めておくといいでしょう。

まとめ

肩まわりの動きを違和感なく描くには…

肩の骨や関節などの構造を知って
動きをイメージできるようになろう!

写真や映像を参考に模写するときには、
中の骨がどうなっているのかを
イメージしながら描くと理解が早い。

また、次に同じポーズを描くときにも
イメージしやすく、描きやすくなります。

 

人の身体って、それこそ人それぞれ。

肩の部分はキャラクターの印象が
とても出る部分だと思います。

人の身体の状態は、
食・生活・職業・趣味などの環境や、
性格なども影響してできています。

キャラクターを描く上でも、
そんなキャラの背景がにじみ出るような
イラストが描けたらいいですよね。
(ハイパー理想…)

理想は高く!歩みは地味に…。

 

ではでは、今回はこの辺で。

ここまでのお付き合い
ありがとうございます。

よいお絵かきライフをお過ごしくださいな^^

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