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手を描くのは難しくない!
ちょっとしたコツで、形を取るのが楽になる。
前回までのところでは、「手を描くにあたって知っておいた方がいい事柄」について書いてきました。
今回はいよいよ、「手の描き方」講座ですよん。
けっこうしつこく例を挙げて描いてみたので少々長くなりましたが、どうぞおつきあい下さいまし。
手を描くためには何が必要?(前回までのおさらい)
前回までの記事に書いた内容と重複しますが、再度確認してみましょう。
手を描けないのはなぜか?
・どこからどう描けばいいのかわからない
・バランスが取れない
・うまく描けない …などなど。
それはつまりこういうこと。
・手は難しいという先入観から苦手意識がある。
・手の表面的な形・輪郭線だけを見ている。
・一部分に囚われて全体を見られていない。 …などなど。
そして初心者さんが一番よくやってしまうのは…
手は難しいと思い込んで、苦手意識から手を描くことを避けてしまうこと。
これは根本的な問題で、避けてばかりでは上達するはずもありません。
頑張って描いてみても、うまく描けないから嫌になってしまう?
おそらく誰もが通る道ですね^^
描き慣れていない場合、うまく描けなくて当然!
ヘコむ必要は全くなーい!のですよ。
手を自在に描けるようになるためには
とにかく「手を知る」ことが大事です。
・形状を知ること。
・構造を知ること。
・動きを知ること。
手が描けない問題を全部ひっくるめて解決するには、まず自分の手を眺め回して観察し、実物を見慣れましょう。
そして、描いてみる!
とにかく描く!
これから楽に描けるようになるための方法をやっていきますので、実際に一緒に描いていきましょうね。
※「手を知る」ことについては、前回までの記事で書きましたので、今回は省いています。
まだの場合はぜひ目を通してみてくださいね。
◇手の形状と構造について
>> イラストで手を楽しく描くコツは、手を知って見慣れること!
◇手の動きについて
>> 手の描き方の前に動きの形・パターンを知っておくと悩まない
手の描き方
ここでは手の描き方を紹介していきますが、練習方法としては次のようにすることをおすすめします。
練習方法
1. 提示している挿絵を見ながら、そのまま真似て描いてみる。
2. 自分の手を見ながら、挿絵の方法を用いて、描いてみる。
この2通りの練習は目的が違います。
1は「手の描き方」を試してみる練習で、あくまでも方法についての学び。
2は、1でやった描き方を用いて、自分なりの見方・捉え方で形に起こす練習です。
実物の手を何度も繰り返し描いているうちに、自分なりの描き方というものが出来てきます。
描き方はひとつではないので、描くことに慣れてくれば、いろいろな描き方を自分なりに試してみるといいでしょう。
それでは、前置きが長くなりましたが、いよいよ手を描いていきましょう。
楽に手を描くための流れ
まずは、文章で説明してもわかりづらいので、挿絵図を見てみましょう。
下記の図は、私が手を描く場合の一例として、工程を順番に並べてみたものです。
ポーズ1. 指を揃えて伸ばしている手
手を描く上で、割と簡単なのがこの、指を揃えているポーズかなぁと思います。
描き方のポイント
1. 描きたい手の大きさの楕円を描く
2. 大まかに手のひら・指の位置を決める
3. 指の太さや傾きの線を入れる
4. 指の長さ・太さなど、全体のバランスを見ながら形を整える
仕上げは、主な線を整理し、不要な線は消す。
描きたい手の基準は人それぞれなので、少ない線で描く場合と、多めの線で描く場合の仕上げと、2パターン描いてみました。
絵柄などを考慮して描いているときりが無いので、ここではあくまでもリアルの手を基準にして描いています。
手の丸みや微妙なカーブなどは、描くことに慣れていない場合には難しいので、はじめのうちは細かい部分は気にしなくても大丈夫です。
まずは大雑把でもいいので、ひとつの手を仕上げまで描いてみましょう。
他の数種類のポーズは2.3へ続きます。
これをやると失敗しやすい?やらない方がいい手の描き方
私がいまだにウッカリやってしまう、時間がかかるし、失敗するわー!という(笑)
うまくいきにくい方法は…
・一部分から指を一本ずつ描く
・細かい部分を気にしすぎる
このような描き方をしていると、次の問題が出てきやすいです。
・手全体のバランスが取りづらい
・手の大きさや向きが、キャラクターの身体と合わない
・時間がかかる上に失敗に気づきにくい
描けた!と思ってから、全体を見たときに歪みに気づいたら…?
いちからやり直しですよね。
失敗を回避するためには、キャラクターの全身と、手の大きさや方向などをあらかじめ決めておくことが大事です。
そのために、描きたい大きさや形などをあらかじめ大雑把に描いておくことを「あたり」といい、あたりを取る、とかいいます。
そこから全体のバランスを見ながら形を整え、細部を描いていくと、比較的すんなりと描き上げることができます。
ポーズの付いた手の描き方
手は様々な形を取ります。
そのため、描き方はひとつではありません。
しかし複雑に考えなくても大丈夫。
描き方にはいくつかのパターンがありますが、どんな手のポーズも、そのパターンの組み合わせで形を取りやすくなるので、難しくはありません。
実際に描いてみると、感覚がわかると思います。
真似して描いてみるときには、各工程の絵をそのまま真似るのではなく、完成図の状態を参考に見ながら、工程をたどって描いてみる方がいいでしょう。
そして描き方の工程がわかれば、次には練習として、実際に自分の手を見ながら描いてみるといいですね。
では、順番に見ていきましょう。
ポーズ2. 指を伸ばして開いている手1(パー)
指を開いている手は、手のひらと指の長さ、開き具合のバランスを取ることに気を付けましょう。
描き方のポイント
1. 手全体の大きさの見当を付けておく。
(図には描いていないが、大雑把に円を描いておいてもよい)
手のひらは楕円(難しければ丸みを帯びた四角形を意識してみよう)、指は棒状の線で描き、指先を繋いだ線で指の長さや間隔・角度のバランスを見る。
2. 指の肉付けは、平らな長方形を描くように簡単に形を取る。
(単純な線で描く方が、バランスを見やすい。)
3. 指や手のひらなど全体の細かい形状を整え、内側のシワや影などを描く。
シワや影を入れるのが難しければ、まず輪郭線だけ意識して整えてみよう。
仕上げ. 輪郭線を整理して余分な線を消す。
線を多く入れる場合、リアルめに仕上げたい場合は、指のシワや影などを入れて手の立体感や質感などを表現します。
手指を開いている状態のイラストは、見た目は簡単そうですが、意外とバランスが難しい。
このポーズを描くコツは、はじめに手のひらを楕円、指を棒状で描いて、全体のバランスを見ておくこと。
この手の場合は、前回の記事「手の動き」で説明したように、手首の中心軸に中指があり、他の指も放射状に伸びていることを想定して描くと、とても描きやすい。
↓コレね。
他にもこんなコツを描いているので、よかったら目を通してみてください。
ポーズ3. 指を開いて伸ばしている手2(立体的なパー)
次は同じく指を開いている手ですが、指が前方、手のひらが奥へと角度が付いている、少々立体的なポーズです。
なにかを絵に描くとき、その物体の厚みの部分が見えると、より難しく感じてしまいますね。
しかしこのポーズ、漫画やゲームなどではよく見かける気がします。
闘う漫画とか、ゲームのボスキャラとか(笑)
なので、これはカッコよく描きたいものです。
描き方のポイント
1. 指の間隔が広く開いているので、指は棒状の線で描き、バランスを見ながら位置の見当を付ける。
2. 手のひらの外側の輪郭線を描き、指は板のように平らな長方形のイメージで簡単に形を取り、それから手のひらの厚みを意識して内側の線を描く。
3. 手を立体的に捉えるために、ロボットの手を想像するとわかりやすいかも。 ※図はこんな感じ…とテキトーに描いてます。
自分の手を見つつ、ロボの手のイメージを重ね、指の谷間・手の平の厚みの部分などを観察してみよう。
4. 全体の細部を整え、シワや影など、気になる部分を描く。
難しければ、外側の輪郭線を整えることだけに集中して描いてみよう。
仕上げ. 少ない線で描く場合も、手の立体感を示すために指関節のシワなどを入れてみました。
多い線でリアルめに仕上げる場合は、より立体感に気を付けてシワや影の線を入れてみましょう。
余裕があれば、どんな線で描けばそれらしく見えるのか?ということを考えながら描いてみよう。線の描き方ひとつで印象が変わるものです。
ポーズ4. 指を握り込む手1(グー)
次は、四本の指を握った手。
四本の指は一見平行に見えますが、少し違う。
そしてそれぞれ指の長さが違うので、折り曲げる角度も若干違う。
難しく感じるかもしれないけど、特徴を掴んで描き方がわかると、この角度はたやすく描けるようになります。
では、見ていきましょう。
※この手のポーズは、自分で見ながら描く…ということは難しいですね。
自分の手をモデルにする場合には、写真を撮ったり鏡で映すなどして描いてみましょう。
描き方のポイント
1. はじめはどのポーズも同じで、描きたい大きさで大雑把に形を描いておく。
2. 全体の特徴的なところを大まかに描き入れる。
ここでは指関節の並ぶ流れや、握り込んだ手の部分など。
3. 指の太さや傾きなどを見ながら、指一本ずつの配置を大雑把に描く。
4. 形を細かく描いていき、影やシワなども描き込む。
挿絵図の例では大雑把な下描きのままになっています。
描き慣れてくればこのくらいの描き込みで充分。
しかし描き慣れていない場合には、もっと下描き時点で描き込む方が失敗が少ないので、仕上げの図を見ながら下描きを詰めてみましょう。
仕上げ. 少ない線で仕上げる場合には、輪郭線の引き方がとても重要になりますので、線を一本一本大事に引いてみましょう。
多めの線で仕上げる場合には、立体感や質感を多く表現出来るので、シワや影がどうなっているのかを観察しつつ線を引いてみましょう。
このポーズを描くコツは、指は全て同じではないので、長さや関節の位置に気をつけて見てみましょう。
四指の関節の位置はバラバラのようで、そうでもなく、四指を曲げた関節の位置の流れを見ると、自然なカーブを描いていたりします。
そういった手のポーズの特徴を掴みながら描くと、収まりのよい、バランスのよい手を描くことができます。
ポーズ5. 指を握り込む手2(正面から見たグー)
次も四指を握り込んでますが、角度が違います。
指を曲げている状態で、正面に近いポーズ…これはなかなか難しいですよ!?
何故手首を傾けたのかは謎です…描きにくさ倍増…。
描き方のポイント
1. 描きたい大きさと形を大まかに描く。
これはどのポーズでも共通ですね。この作業でこれから描く手のサイズや方向性が変わらないようにします。
2. 全体を見て、特徴的な部分を大雑把に描く。
このポーズで特徴的な部分は、親指・手のひら・四指の割合、指関節の流れなどを描いておく。
3. 四指一本ずつの形を、バランスを見ながら単純な線で描いていく。
このポーズの難しい部分はこの四指。指の傾き、関節の位置。この輪郭だけを気にして描いてみよう。
4. 細かく形を整えていく。
描きづらいポーズの場合はなおさら気の済むまで描き込んでみよう。
仕上げ. 少ない線での仕上げも、関節のシワなどを描いてみました。
デフォルメした手を描きたい場合には、関節のシワや骨の浮き出ている線は描かなくてもいいでしょう。
指を曲げているポーズで関節が正面を向いている絵はかなり難しいので、描けなくても落ち込む必要はありません。
描けなくて当たり前ですから^^
今は描けなくても、何度か挑戦しているうちに、徐々に描けるようになるものですので、気楽に行きましょ~。
ポーズ6. 伸ばす指と握り込む指1(チョキ, ピース)
次は、パーとグーの混合、チョキの登場~!
描き方も混合になるのですよ。
ここまで目を通してくださったあなたは、もう描き方の流れがわかるかも。
一応、しつこく続けて行きまーす。
描き方のポイント
1. 描きたい手の大きさの楕円を描きます。
2. 全体を見て特徴的な形を描いていく。
手のグーの部分は円(描きづらければ複数の直線)でだいたいの大きさを形作り、チョキの部分は指が2本伸びているので、棒が2本出ますな。
3. 肉付けするために、指は板状の平らな長方形で簡単に形を取ってみる。
関節の位置の流れも忘れずに。
4. 形を整えながら細部も描いていく。
仕上げ. 指関節のシワなどは、描いても描かなくても、一本でも二本でも、これは好みの範疇でいいかな~と思います。
ポーズ7. 伸ばす指と握り込む指2(決めポーズ)
次は、伸ばしている指は2本ですが、親指と人差し指の場合。
親指の動きは他の四指とは違い、向きも違うので注意。
このポーズも平面ではなく、前方に突き出しているので描きづらいですよ。
描き方のポイント
1. 描きたい大きさ、特徴的な部分の形状を大雑把に描く。
このポーズでは人差し指が一番長く突き出ているけど、前方へ傾いているので意外と短め。
2. 肉付けするために、全体の形を大雑把な線で取る。
指は板のような平らな四角形で、関節の位置も忘れずに。
3. よく観察して輪郭線を整え、内側の細部も描いていく。
4. 立体を捉えるのが難しく感じたら、ロボットの指のように見立ててみよう。
仕上げ. この角度も正面に指の関節がくるので表現が難しいです。
(見本図のリアルめの方は描き込みすぎで少々ホラー気味に…/笑)
関節のシワや骨の浮きなど、特徴的な部分をどう描けばそれらしく見えるのか、いろいろ描いて試してみるのもいいでしょう。
練習のときには見たまま描くがいいと思いますが、漫画やイラストで描くときには、人差し指・親指を誇張したオーバーアクションで描くのもいいでしょう。
※ちなみに挿絵は、自分の手を写真に撮ってから見て描いているので、実際に生で見るよりもパースが付いて、多少指が太くなっているかもです…。
まとめ
さて、しつこく7パターンも描いてみましたが…
(く…くたびれ…)
だいたいの描き方の流れはわかったでしょうか。
手のポーズ毎に描き方は多少違うものの、大筋の流れはほとんど同じです。
更にしつこいですが改めて、ざっとまとめてみましょう。
手を楽に描けるようになるための、形の取り方・描き方
1. はじめに簡易な線でアタリを取り、全体のサイズ感・バランスを見る
描きたい手の大きさ・形を大雑把に形取る。
手のひらは楕円、グーも楕円、伸ばした指は棒で簡易に描き、全体のバランスを見ながら位置を調整。
2. 全体の大まかな形を捉える
特徴的な部分を簡単な線で描き入れる。
関節の位置の流れを捉え、指は平らな板状のような長方形で大雑把に形を取る。
3. 細部を詰める
外枠の輪郭線は、すでにバランスを見ながら大体の形を取っているので、それをガイドに細かく整えていく。
あとは内側のシワや影を描き入れたり、線整理と調整をする。
上記の描き方の流れで行うと、簡易な図でバランスを取り、徐々に肉付けしていく形になるので、時間も短く失敗も少なくて済む。
このような描き方は、手を描くときばかりでは無く、いろいろなものを描くときに役立てることが出来ます。
はじめから細かく描きながらバランスを取りながら…という方法で描いていると、時間がかかるし失敗したときの手戻りも大きいので注意です。
※ただし、始めから最後まで一部分だけを見て描き進める、という手法もあったりしますので、それはそれ、これはこれ…。
気になる方はいろいろな手法を試してみて、自分に合う描き方を選択すればいいのかなと思います。柔軟にいきましょう^^
練習方法
1. 提示している挿絵図を見ながら、そのまま真似て描いてみる。
これは描き方の方法を覚えるため。
2. 自分の手を見ながら、挿絵図の方法を用いて、描いてみる。
これは自分の見方・捉え方を養うため。
この練習方法も、今回のみに限らず、絵を描くとき全般の練習方法に当てはめることができます。
例えば…
好きな作家さんの絵を見て描く
→ 構図や絵の見せ方、線の入れ方などの表現方法を学ぶ。
人や物など、実物を見て描く
→ 自分のものの見方・捉え方を養う。
描けないものは描くことで描き慣れ、描けるようになります。
どうしても描けない、あるいは描くのがつらいと思っていたものでも、何度か挑戦しているうちに、いつのまにか描けるようになっているものです。
いろいろと見て、描いて、試して、慣れていきましょう。
描けるようになると、どんどん楽しくなってきますよ。
ではでは、かなり長くなりましたが、今回はこの辺で。
ここまでおつきあい下さいまして有難うございます。
練習までも楽しくいきましょ~^^