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動きのあるポーズを描くとき、
「胴体の動き」というのは意外と重要です。
いろいろなポーズを描いてみるけれど、
「なんだか代わり映えのない絵」になってしまう。
動いている絵を描いているつもりなのに、
「なんだか不自然」に見えるのはどうしてなのか?
そういう場合、胴体が動いていないから、もしくは、胴体の動きがなんだか変?なのかもしれない。
では胴体って、どんな動きをするのでしょうか…?
わかるようでいて、わかりづらい。
今回はそんな、胴体の動きについて見ていきます。
胴体の動き~自然、不自然?
胴体は大きな動きをしない限り、意外と地味?で分かりづらいかもしれない。
普段、自分で動くときにも、胴体がどう動くのかなんてあまり意識することもないですよね。
胴体の動きというのは、背骨の動きなのです。
体の中心には背骨が通っています。
背骨が動くと、胸の位置にある肋骨は連動して動くし、骨盤も動きます。
(骨の名前や位置を知りたい場合は、こちらの記事→ 胴体の骨の形 もどうぞ)
そして体の一部分…首や腕、脚だけを動かすときにでも、それがある程度の動きであれば、胴体も連動して動くのです。
…ちょっと分かりづらいでしょうか。
例を一つ上げてみますね。
どのポーズが不自然に見えますか?
後ろを振り返っているようなポーズをいくつか描いてみました。
【図1-1:胴体の動き〈例〉~問~】
どのポーズが不自然に見えますか?
見た目の印象でいいので、考えてみましょう。
…………
……
…
考えてみました?
よくわからなかったら、自分で意識しながら動いてみたり、動きながら鏡を見るなどしてみるといいでしょう。
実際の基準と絵的な基準
では先程の問に対して、私なりの答えを上げます。
【図1-2:胴体の動き〈例〉~答え~】
この例はあくまでも、
「実際にこれらのポーズができるかどうか」という基準から描いてみたものです。
実際に生身の人間がやるのは無理なポーズでも、絵の見た目には『さほど不自然には見えない』というポーズもありますよね。
漫画やアニメで描かれている絵には、実際には無理なポーズというのが意外と多くあったりします。
よりわかりやすく見せるためだとか、特に何かを主張したいときなど、表現を極端に描かれたりすることはよくあることです。
なので絵を描く上では、実際のポーズができるかどうかもある程度は重要ですが、次の2点を気にして描ければいいかなと思います。
- 不自然に見えないこと
- 気持ち悪く見えないこと
つまり、極端に行き過ぎたポーズでなければ、ある程度は大丈夫…だと、個人的には思います。
描いてみて違和感があれば、何かが違う?と思って確認してみるといいかな。
そのためにも、胴体は基本的にはどう動くのか、ということを知っておくといいでしょう。
人の胴体(背骨)の動きと制限
それでは、胴体の動きを見てみましょう。
胴体の動きは主に3つ。
- 前後へ曲げる
- 左右へ曲げる
- ひねる
胴の動きは主に背骨の動き。
小さな動きから大きな動きまで、背骨が動くと肋骨や骨盤など、全体が連動して動きます。
骨は沢山あって一つ一つを見てもわかりづらいので、全体でひとつの塊として見ていきましょう。
胴体を前後へ曲げる~前屈(屈曲)・後屈(伸展)
まずは背骨の前後の動きについて。
【図2-1:胴体(背骨)の動き~前後】
背骨の前後の動きは、前にはけっこう曲がるけれど、後ろにはあまり反ることはできないですよね。
背骨の一つ一つの骨には、体が動きすぎてしまわないように、ストッパーとなる突起がついている形になっています。
身体が柔らかいとか硬いとか、多少の柔軟性に個人差はあるにしても、極端なことにならないような体の仕組みになっているのです。
腰(骨盤)を固定するように座りながら、自分でも意識しながら動いて確認してみるといいでしょう。
でも身体に支障があったり、痛みがある場合は無理してやらないよう、慎重に…。
胴体を左右へ曲げる~側屈
次は背骨の左右の動きについて。
【図2-2:胴体(背骨)の動き~左右】
背骨は、左右に極端には曲がらないもの。
なぜなら胸椎には肋骨が付いているため。
背骨を左右に曲げると、肋骨も少々の動きはあるものの、胸部(胸郭)はほぼそのままの形。
肋骨は筒状に繋がっている(第11・第12肋骨以外は)ので、極端な動きはできないのです。
横にすごく曲げられるよ~!という場合は、前後どちらかに体を傾けて曲げているはず。
それくらい、思ったほど左右に大きくは振れないのですよ。
座った状態で自分で慎重に確認してみましょう。
胴体をひねる~回旋
つぎは、背骨の捻り(回旋)について。
背骨のひねりって…
背骨だけではとても分かりづらいので、体全体で描いてみました。
【図2-3:背骨の動き~捻り(ひねり)】
体のひねりは、座っているときと立っているときでは、ひねれる角度が違います。
座った状態で胴体だけひねると45度くらいかな。
立った状態では、肩を90度くらいになるまで体をひねることができます。
この場合は全身で、骨盤や脚・足も一緒に捻っているからかなんですね。
このように、立った状態と座った状態でも、動ける範囲は違ってきます。
ちなみに体に歪みがあると、左右で捻じれる角度は違ってきますよ。
右にはあまり捻じれないけど、左にはすごく捻じれるとかね。
なんでもそうですが、そのときの体の状態とか、個人差もあったりするので、あまり捻じれないからと悩まなくてもいいですよ~。
肋骨の動きと連動
最後に、肋骨はひとまとめに考えていいと思いますが、肋骨の動きについて少し補足しておきます。
肋骨は背骨の動きに合わせて、うまく縮こまったり膨らんだりして動きます。
細かい動きを捉えるのは難しいしわかりづらいので、絵を描く上では、動きに合わせてある程度の柔軟な動きをしている、と知っているだけでもいいのかなと思います。
肋骨と呼吸
肋骨は背骨とともに少々動くけれど、その前に、主に呼吸によって動きます。
息を吸うと肋骨は全体に膨らみ、
息を吐けば肋骨は縮み(元に戻り)ます。
肋骨が物理的に伸び縮みするのではなく、肋骨は上下・前後・左右にと、胸郭全体が連動して動くことで、骨の間が広がったり戻ったりして動作するということです。
呼吸と胸を張る動作
漫画やアニメでは、場面によって呼吸をわかりやすく、すこし大げさに描かれたりしますよね。
胸を張る絵を描くときには、肩を後ろへ反らせて胸を前に突き出すだけではなく、
深呼吸をして沢山息を吸うことで、肋骨を広げるように胸を膨らませたりする描写も見られます。
スタジオジブリの宮崎駿さんが描く人物には、よくそのような描写があったと思います。
こういう動きの表現一つで、見せ方が変わってくる。
共感が得られたり、面白みが出たりと楽しいですよね。
まとめ
今回は「胴体の動き」についてまとめてみました。
胴体の動きってわかりづらく地味ながら、しかし、人物の動きに合っていないと違和感が出てしまうという重要な部分。
描いた絵に何か違和感が出てしまうとき。
それは何かが違う、不自然な部分があるということ。
動きのある絵を描くときには、その人物が何を思ってその動作をしているのかを考えてみる。
そして実際には、どういう動きになるのかと自分でポーズを取ってみる。
鏡で見てみるなり、スマホで動画を取ってみるなりして、動きの全体と胴体の状態をよく観察してみるといいですね。
(便利になったものだぁ~ね~)
面倒なら、近くにいる人にポーズを取ってもらいましょ。
それでは今回はこのへんで。
よいお絵描きタイムをお過ごしくださいな~^^